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2009年1月8日(木)
「企業は人」ということを考える


私が住む石川県能美市内に、株式会社オンワード技研という企業があります。実は私の父は配管設備の仕事をしているのですが、株式会社オンワード技研の社屋内で父が請けた工事を、先日手伝いました。株式会社オンワード技研は、世界一薄くて丈夫な金属コーティングができる技術を持っている企業です。本社から車で20分ほど離れた所にある研究所で性能試験を繰り返していた自社製作の機械の試験が終わり、本社の一角に移設することになったのです。それに伴って、研究所と本社で、それぞれ配管の工事が必要だったのです。

わずか2日間の経験でしたが、私は、同社が“技術大好き人間の集まり”かも知れないと感じました。というのは、工事の場所を通りかかる社員の多くが、私たちが作業をする様子を観察しながら通り過ぎるのです。私たちの顔ではなく、私たちの手元の道具や使っている機械を見つめながら、です。中には足を止めて、しばし見入る社員もいました。単なるパイプの「ネジ切り」ですら、興味深そうに見るのです。そう、彼らの目は輝いていました。また、同社には博士号取得者が何名かいると聞いてはいましたが、同じ作業現場で接した彼らから感じた雰囲気は、「研究者」というよりも、「現場の技術者」でした。

「人は城、人は石垣、人は堀」という武田信玄のものと伝えられる言葉は有名です。企業はこの言葉をとても好み、「企業は人なり」という言葉も、日本の企業では長らく唱えられました。戦国時代も今も、器がどんなに立派でも、それを支える“人”を大事にしなければ滅びてしまう、という考え方・理念は、20世紀後半の日本のスタンダードだったように思います。

そして、
その“人”というのは、その仕事に情熱を持つ“人”という意味であって、単なる人数や過去の大学での成績などではないはずです。近年トヨタに東大出身者が増えたものの、彼らの中には、「車が好き」というモチベーションではなく、「大企業のトヨタなら安心」という安定志向から入社した者もいて、少なからずあつれきを生んでいることは、最近有名です。それに比べれば、社員の数が100人に満たないものの、コーティングという分野において世界一の技術力を持つ株式会社オンワード技研で働くことを選んだ社員たちが、ちょっとした技術にも興味を示すことは当然かも知れません。日本は、そのような“人”、つまり財産を、まだまだたくさん抱えた国なのでしょう。

アメリカに端を発した金融危機に続く世界的な不況は、例外なく日本にも襲いかかっており、深刻な問題ですが、日本はそれでも恵まれていると思うのです。なぜなら、日本には、世界の中で10番目に多くの“人”がいます。最近の経済雑誌は、「内需拡大を」と主張していますが、人口が少なければ内需拡大のしようがありません。経済の6割を金融業が占めるイギリスの金融危機は深刻です。内需拡大ということは日本に比べると簡単にはいかないでしょう。イギリスの人口は世界22位です。製造業にも人口にも乏しいアイスランドの深刻さは、ニュースでも取り上げられています。

最近の日本では、輸出のウェイトが高い製造業の失速が注目されていますが、でも本来、日本の製造業は庶民的な生活に密着した“ものづくり”が得意だったではありませんか?昨年までとは、大きく情勢が変化した今、やはり、輸出から内需へという発想の転換が必要かも知れません。繰り返しますが、日本には“人”がいます。そして、先日、希望を感じさせる“人”たちに出会うことができたのです。


 
 株式会社オンワード技研本社正面玄関
2009年3月30日(月)
雇用安定助成金による教育訓練スタート


昨年末以来顕在化した製造業の不況に対応して、厚生労働省は従来の「雇用調整助成金」制度を見直し、「中小企業緊急雇用安定助成金」制度をスタートさせました。これは、経済上の理由から社員を退職させる替わりに、休業や社員を出向させたり教育訓練を受けさせたりする場合、国が企業に助成金を支給する制度です。

昨年末にこの制度がスタートして以来、企業や製造業の業界団体は一斉に、教育訓練の準備を進めてきました。そのため現在、研修講師の不足が石川県では起きているようです。

そういう事情の中、申請や認可などの準備が整い、今月から教育訓練が始まっています。私は今月上旬より、能登地区の企業からの依頼により、社員の教育訓練を何度か担当させていただきました。また、単独で教育訓練を行なうことが難しい小規模の企業を集めて開催される業界団体による教育訓練も、いよいよスタートし、こちらは私の地元の団体を中心に依頼をいただいています。

教育訓練のやり方は講師によって当然異なりますが、私の場合グループワークを主体とした研修で進めています。教育訓練の対象は主に“現業職”と呼ばれる製造現場の社員で、ラインによってはコミュニケーションが普段取りにくい人たちもいます。そのため、研修ではグループワークによるコミュニケーションを中心に進めています。

今後どれくらいの期間この制度が続くのか分かりませんが、今のところ参加者は研修を楽しんでいるように見受けられます。昨年までの繁忙期においても年間の研修計画にそった研修は行なわれているわけですが、ただ、今回の助成金の対象となる教育訓練は「通常のものは対象外」とされているために、普段行なう機会がない内容の研修を行なっています。グループワークによるコミュニケーションや普段やらない内容を、社員たちは楽しんでくれています。また、業界団体が主催する研修では、複数の企業の社員が参加することで、何らかの刺激にもなっているようです。中には研修の機会がこれまで殆ど無かった企業もあり、今のところ新鮮な気持ちで参加してくれているようです。




グループワークを主体に
2009年5月23日(土)
教育訓練のその後


3月からさせていただいている「中小企業緊急雇用安定助成金」に関連した研修が多くなってきました。先月は、ある団体で毎週月曜日と金曜日に連続で研修をさせていただき、それ以外の曜日は他の団体や企業の研修をさせていただくという状態が続きました。

製造業には、繊維・食品・IT部品など様々ありますが、石川県の加賀地方では建設機械・工作機械などの関連の製造業が多いのです。今まさに加賀地方に多いそうした企業が不況の只中にあります。

他方、IT関連では業績が回復してきている企業が見られます。今回の不況は同時に“円高”に見舞われ、輸出関連の企業は苦しいと言われます。ところが、日本の家電メーカーのライバルである中国や韓国のメーカーが、円高に苦しむ日本のメーカーを尻目に、世界で製品のシェアを伸ばしています。日本の企業でこうした中国や韓国のメーカーに部品を供給してきた企業が、現在業績を回復させつつあるようです。
家電の他にも携帯電話や太陽電池なども、その心臓部には日本製の精密部品が使われています。その恩恵を受けて、日本の最終完成品メーカーは苦しい状態が続いているものの、精密部品メーカーでは、アジア企業の業績回復に伴って回復が同時に進んでいるというわけです。

とはいえ、加賀地方に多い建設機械や工作機械関連のメーカー、いわゆる鉄工業界では仕事が無く、週のうち3〜4日も社員の教育訓練に当てているという企業が珍しくありません。当初は研修に参加することを楽しんでいた社員たちにも、さすがに疲れが見られます。それまで立ち仕事をしていた工場の製造現場の人たちが、教育訓練の日は6〜8時間座る姿勢を取る事が中心ですから、無理もありません。毎週月曜日と金曜日に私が講師を務める団体の研修に、同じ社員が毎回必ず参加する企業も幾つかあります。最近では、20数社の社員、合わせて100名近く受講しています。

そうした中、毎回異なるテーマとテキストを用意し、参加者の集中が途切れないようにプログラムの工夫をしているわけですが、企業の考え方は様々なので、社員が参加する態度にも違いが見られます。毎回とても熱心な態度の社員が多い企業もあれば、管理職も含めて冒頭から雑談や読書をするつもりで参加してくる企業もあります。「参加したくないなら帰ってください」というのは、この研修の趣旨からすれば言えないと思います。グループ分けを途中で変更したり、レクチャー形式に切り替えたりと、様々な工夫をする必要があります。放置すれば、他の企業の参加者に迷惑が掛かるのです。

ところが、「この制度は税金の垂れ流し?」と思いたくなるような状態も出てきているのが現状です。

講師を務める立場から言えば、せっかくの機会の研修なので役立てていただきたいという思いがありますが、企業によっては政府から助成金を受け取ることだけが目的のような企業が残念ながら見られます。私の研修ではありませんが、参加する社員がビールを持参して参加したというケースも複数の団体で耳にしました。厚生労働省は、そうした実態をチェックしないのでしょうか?少なくとも、現場でこの教育訓練を実施している私自身が、厚生労働省に報告書を提出する義務が無いという現状には、疑問を感じます。

ともあれ、加賀地方では、まだ先の明るい展望が見えません。当分この研修が続くものと思われます。ちなみに今回の助成金の関係で、企業の社員対象に、団体や企業で私が行なっている教育訓練(研修メニュー)は、次の通りです。

 ・小集団活動導入研修(5S編)
 ・小集団活動導入研修(QCサークル編)T、U
 ・小集団活動フォローアップ研修
 ・職場のコミュニケーション向上研修T、U
 ・製造業の職場マナー研修
 ・業務改善のための創造力・企画力養成研修
 ・アイデア発想と企画書の書きかた研修
 ・キャリアデザイン研修
 ・意思伝達に必要な5W2H研修
 ・協調性養成研修
 ・相互育成の職場づくり研修
 ・職場のチームワーク向上研修
 ・仕事に求められるプラス思考研修T、U
 ・チームワークを高めるブレーンストーミング研修T、U、V
 ・働き続けるための自己分析研修
 ・ミーティングのスキル向上研修
 




企業の食堂における社員の研修
2009年6月20日(土)
理想の仕事は人それぞれ


先月から、全16回の予定で、あるビジネススクールで、公務員を目指している若者への就職支援を行なっています。「自己分析・面接カードの書きかた」「面接マナー」に始まり、現在は個別・集団の面接指導と、集団討論指導を繰り返し行なっています。これは同じメンバー数名に対して継続して行なう指導です。

私が担当している若者は全員、社会経験があります。つまり、いったんは民間企業で働いたものの公務員を目指して退職し、ビジネススクールで勉強中の人たちです。
とても勉強熱心な人たちです。

でも、一点、私は疑問を感じることがあります。彼らの全てがそうだという訳ではないし、また、昨年までジョブカフェでカウンセラーをしていた時にもしばしば出会ったケースなのですが、公務員を目指すことが本人の長年の夢や人生観に根ざす理由からなら問題は無いのですが、民間の仕事(彼らの場合は以前勤めていた会社)からの逃避の気持ちのようなものを、時には感じることがあるのです。「公務員としてこういう行政をやって人々の暮らしを良くするんだ!」という熱意のようなものが本人から感じられないということです。それでは、面接で“やる気”を伝えることはできません。

そういう場合には当然のことながら、対話の中で、本人の自己分析を深めるとともに、公務員としての抱負を描き出します。つまり、公務員が自分の天職であると本人自身が強く認識できるようにサポートを行なうのです。

また、「公務員は民間と違って長時間の残業が無い」といった首を傾げたくなるような思い込みを持っている人が、中にはいる点も気になります。過去に出会った人の中で、公務員になることは親の希望だという人も時折いました。親が働くのではなく、本人が働くわけです。公務員に限らず、本人による職業研究が充分ではない状態では将来が不安です。自己分析・抱負と合わせて職業理解をさせることも、私どもキャリアカウンセラーにとっては重要なサポートです。現在関わっている若者が皆、最後には良い結果を掴むことを祈っています。

ところで、
NHKが実施した「日本人の意識・2008」という調査の中で、興味深い項目があります。対象は16歳以上の国民5400名(回答者数3103名)で、「理想の仕事」のイメージを集計したものです。順位は下記の通りです。

 第1位  「仲間と楽しく働ける仕事  21.4%
 第2位  「専門知識や特技が生かせる仕事  17.7%
 第3位  「健康を損なう心配が無い仕事  16.9%
 第4位  「失業の心配が無い仕事  16.0%
 第5位  「世の中のためになる仕事  7.9%
 第6位  「高い収入が得られる仕事  7.8%
 第7位  「働く時間が短い仕事  4.0%
 第8位  「独立して人に気兼ねなくやれる仕事  3.3%
 第9位  「責任者として采配がふるえる仕事  2.5%
 第10位 「世間からもてはやされる仕事  0.2%
 わからない  2.5%

ある時、高収入を求める人の割合が多いと思われる業界で働く人にこの結果を見せたところ、「きれい事で答えている」という捉え方をされたことがありました。でも、キャリアカウンセラーとして数千人の人たちに接してきた私は、上記の調査結果には納得できます。「理想の仕事」は千差万別なのです。そして、家族や仲の良い友人から「良い仕事だ」と勧める仕事も、万人に当てはまるものではないのです。仕事は勧めてくれた人が代わりにしてくれるわけではありません。あくまで本人が自分の価値観に照らし合わせて選ぶものです。




お辞儀の練習
2009年8月29日(土)
グループワークを楽しもう


中小企業緊急雇用安定助成金を使った企業や団体の教育訓練(社員研修)が、まだ続いています。

この度の教育訓練は参加者が相対的に自主的に受けているというわけではなく、どちらかといえば雇用対策のために企業から指示を受けて参加しています。

そのため私は、パワーポイントを使ったレクチャー形式の研修ではなく、グループワークを主体に参加者同士のコミュニケーションを図るプログラムで行なっています。グループワークは、働く人にとっては“職場のミーティング”“打ち合わせ”と同じことです。

そもそも職場は、人が持つ意見・イメージ・価値観に違いがあり、性格や年齢も異なるからこそ、ミーティングが必要なのです。職場では、改まった会議だけでなく、互いの意思疎通と合意形成を図るために、ミーティングや打ち合わせが頻繁に行なわれます。仕事はチームワークですから。

ところが、意思疎通や合意形成に至る工夫がなされず、効率のみを追求したミーティングや、逆に司会役が「誰か意見はありませんか?」と繰り返し続けるミーティングほど無意味なものはありません。それは「やらせ」のようなものです。効率追求ならばトップダウンで済むわけですが、それだけでは職場はうまくいきません。社員の主体性も育ちません。また、単に時間を掛けてフリートークをしても成果が出るミーティングにはなりません。

発言の機会をできるだけ平等にしながら、人の意見をきちんと聴き、自分の意見を他の人に受け入れられるように述べること、そしてその中から違いと共通点を整理し、全員が折り合える着地点を見出すこと。つまり、ミーティングによってチームワークを高めるには、工夫が必要です。“意味のある遠回り”のプロセスを経ることが重要なのです。相互理解が深まる全員参加のミーティングは、参加者にとっても達成感があります。

進め方ですが、@「各自が自分の意見を書き出してまとめる」⇒A「各自書き出したことに基づいてミーティングを開始する」という手順で行なうと、「時間ばかりが過ぎて意見がなかなか出ない」という事態が防げます。

ミーティングは、“ブレーンストーミング”の原則をルールにして進めるのも大事なポイントです。
誰か一人が述べた1つの意見に対して、賛成か反対かというように一問一答するのではなく、意見を多く出しながら、違いと共通点を見出していくのです。

  【ブレーンストーミングの4つの原則】
   1.意見の量を求める。
   2.出た意見に対する批判の禁止(他人の意見も自分の意見も)。
   3.変わった意見も歓迎する。
   4.他の意見をヒントにして更に意見を出す結合改善。


グループワークにおける
アドバイス(声かけ)風景

2009年9月9日(水)
夏が終わって


昨年までの厳しい残暑とは打って変わり、今年は夏がすっかり終わった気配です。我が家の庭でも昼間のセミの声はもうほとんど聞こえず、夜は賑やかな虫の声が秋を感じさせてくれます。今年の夏はとても短かった気がしますが、各地で地震や洪水などの災害があり、また、4年ぶりの衆議院議員選挙もあり、歴史に残るような夏でした。

私は今年、地元の町内会・地区PTA・公民館などの活動に参加しており、小学生の合宿の引率や祭りの踊りなどを初めて経験しました。踊りは「根上音頭」というもので、7月下旬の根上七夕祭りで11名の地区PTAチームの一員として踊りました。小学生6名、母親2名、父親3名という混成チームです。参加した47チームのうち、私たちのチームは唯一年齢も浴衣もバラバラの「デコボコチーム」だったかも知れません。

でも、練習を重ねるにつれて一体感が深まり、全員の情熱が高まるという、とても良い経験をしました。コンテストでの入賞は果たせなかったものの、大きな高揚感と達成感がありました。踊りは観るのと踊るのとでは、まったく別の体験になるのですね。新鮮な喜びが得られました。


ところで、この夏、私にとって最も印象深い出来事は、衆議院選挙の結果を受けた“政権交代”です。現役首相が二人続けて任期途中の約一年で辞任するという、他に例を見ない信じられないような異常事態を受けて登場した麻生首相でしたが、そうした中で自民党が掲げた「責任力」というスローガンに違和感を覚えた人も多かったのではないでしょうか。「福祉と平和」というかつて公明党に感じたイメージも、ここ数年ですっかり変質してしまいました。「子ども手当ては公明党が先に言い出した」という主張も、未熟な喧嘩のようで、聞いている方が恥ずかしくなりました。

また、132兆円の経済対策を力説する一方で民主党が掲げたマニフェストをバラマキだと批判し続けた自公政権ですが、「バラマキ」という次元の話を争点にしようとするならば、「どちらがバラマキ?」という疑問を惹起させてしまいます。かえって不利に働いたのかも知れません。民主党などの「生活重視&無駄の排除」の方の説得力が上回っていたということでしょう。

ともあれ、有権者が選んだ結果は「従来のやり方の延長」ではなく「変革」でした。


私の知り合いに自民党を強く支持する自営業の男性がいます。私が緊急雇用安定助成金の教育研修を行なっていると知った彼は、「日本の企業は苦境のたびに変革を行なって荒波を乗り越え、自ら強くなってきた。それなのに今の政策は、時代に合わなくなって潰れる必要がある企業まで延命させようとしているのか?オイルショックの時にもそんな制度は無かったのに」と言うのです。

確かに、過保護は人を成長させるどころか主体性を奪います。苦労は成長の糧です。近年、主体性を無くし、アメリカからの要求を実現させることを優先してきた自公政権の下野は、国会の勢力図の変化に留まらず、日本の国民性や価値観が大きく変化していく可能性を示唆していると感じます。

新たな時代の到来を受けて、キャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)の私としても、時代に対応して自己研鑽に励んでいかなくてはなりません。


11名の混成チームによる根上音頭

2009年9月17日(木)
どんな経験も人生のこやし


新政権が誕生しました。深夜のNHK総合で生中継された新閣僚の記者会見は面白かったですね。従来感じられたような「官僚に言わされている」「大臣は誰がなっても同じ」という雰囲気とは正反対に、新閣僚が自分の信念と言葉で語る会見は、実にパワーがありました。

ところで、私は石川2区に住んでいます。選挙では元首相に若い新人の田中美絵子氏が挑み、接戦を繰り広げました。そして、比例復活で国会議員になりました。すごく度胸があり将来性もある若い政治家の誕生です。ところが、一部週刊誌、それも女性の“性を売り物”にしているような週刊誌が、盛んに田中美絵子氏の過去を取り上げています。私はかなり違和感を感じています。

「若い時は買ってでも苦労をしろ」「失敗は成功の元」と言われます。でも、私はキャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)の立場からもう一歩踏み込んで言いたいと思います。「どんな経験もすべて無駄な経験は無い。すべてはその人の人生のこやしになる」ということです。

人はそれぞれ、様々な顔を持ちます。職業人としての顔以外に、人には、家庭(子どもとして、親として、配偶者として)・地域・余暇の活動などで、様々な顔と様々な役割があります。これらは別々にあるように見えるかも知れませんが、その人の中ではすべてつながっていて、“その人らしさ”を形成しています。歩んできた道のすべてが、その人のキャリアです。そして、そのキャリアをプラスに捉えれば大いに活用できるし、マイナスに捉えれば役に立てることは難しくなります。

若くして様々な経験をしてきた田中美絵子氏に、人生や人に対する深い洞察のできる政治家として活躍していただくことを期待しています。




雨降って地固まる
2009年10月28日(水)
キャリア・コンサルタント国家資格の合格を振り返って


従来、民間資格のみだったキャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)資格に、今年から国家資格が導入されました。既に、今年は2回検定が実施され、私は夏に行われた2回目の検定を受けてお陰さまで合格しました。

正式名称は「キャリア・コンサルティング技能士」の技能検定」です。今年は1級が無く2級のみの検定ですので、私は「2級キャリア・コンサルティング技能士(国家資格)」を取得したのです。

検定試験は、筆記試験による「学科試験」と、論述試験および面接試験(カウンセリング実技試験)の2つの「実技試験」から成り立っています。このうち私は学科試験免除の資格を与えられたので、2つの実技試験を受けるだけで済みました。

キャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)の社会的な認知度の向上のために以前から待ち望まれていた国家資格で、全国で多くの受験者が挑戦しました。そのほとんどは民間資格を持ち実務経験もあるキャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)です。そのため、私と同様に、ほとんどの受験者は学科試験を免除されています。

第1回目は3,236名が受験し、第2回目は
1,559名が受験しました。合格者はそれぞれ452名と335名です。率にすると、14.0%と21.5%ですね。かなり厳しい数字だと言えます。

キャリア・コンサルティング技能検定は、まだ始まったばかりなので、私も手探りの状態で受験の準備をしたり、実技試験を受けたりしました。また、第1回を受験した人にもアドバイスを求めたものの、あまりはっきりしたことは分からなかったのです。ですから、私の経験は参考になるかどうか分かりませんが、これから受ける人のために今の時点で感じる教訓を、少し書きたいと思います。

実技の論述試験では、キャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)と相談者とのカウンセリングの記録「逐語記録」が提示され、次の3点が問われます。

問1 相談者がこの面談で相談したい「問題」は何か記述せよ。
問2 あなたは、上記の「問題」を解決するにあたって、@どこに目標をおいて、Aどういうこ
とを具体的に実施したいか。あなたのストラテジー(戦略)を記述せよ。
問3 キャリア・コンサルタントとしてあなたが考える、@問1、問2で記述した以外の相談者
の「問題」は何か、また、Aその「問題」を解決する為に、今後どういうことを具体的に実施
したいか、記述せよ。

この3問の問題は、第1回目にも第2回目にも出されました。そして、振り返ると、面接試験(カウンセリング実技試験)でも、20分間のカウンセリング実技終了後に試験官から同様の質問をされたのです。

つまり、幾つか質問をされた中には、@来談者の訴える主訴は何か、A来談者の主訴を解決するための目標と解決策、Bキャリア・コンサルタントとして来談者に感じるその他の問題点は何か、それを解決するために具体的にどのようなことを実施したいか、が含まれていたのです。

どうやらこの3点は、国家資格・キャリア・コンサルティング技能士の合格のためのキーワードではないかと感じるのです。

キャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)ではない人には分かりにくいと思いますが、民間資格の実技試験で重視されるのは「来談者中心療法」に基づく「傾聴」というスキルです。つまり、相談者と信頼関係(ラポール)が築けるかどうか、相談者の話をじっくり聴くことができるかどうか、が重視されます。カウンセリング実技試験の時間は10分未満です。

こうした実技試験のやり方に、私たちキャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)は慣れすぎているのかも知れません。ですが、国家資格のキャリア・コンサルティング技能士の場合、これでは不十分なのです。なぜなら、実際のキャリア・カウンセリングの現場では、傾聴だけですべての問題が解決するわけではないからです。その先にあるキャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)としての、相談者の問題への介入の質が見られているのでなないかと、私は感じたのです。


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         毎田雄一

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