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2007年11月8日(木)
外国人留学生の就職事情

私が週に1度、学生へのキャリア・カウンセリングをするために訪れている北陸先端科学技術大学院大学で、修士1年に在籍する外国人留学生を対象に、就職ガイダンスを行ないました。

2年制の修士の学生にとっては、入学と同時に就職活動に入っているとも言える、今の厳しい就職事情がありますが、10月入学制度を利用して入学する外国人学生も多いため、決して遅いとも言い切れないかも知れません。元々、北陸先端科学技術大学院大学は5人に1人が外国人留学生で、博士課程の授業はすべて英語で行なわれる、という状況から、学内では英語、中国語、ベトナム語などが飛び交っています。

外国人留学生の中で、特に中国人留学生は、帰国することなく大学院修了後に日本の企業へ就職することを望む学生が多いのです。カウンセリングの中で、「日本が好きで日本に来た。だから帰るつもりは無い」という思いを感じる学生が多くいます。ただ、「就職するなら会社は大きければ大きいほど良い。できるだけ有名な会社に入りたい」という思いも同時に、とても強く持っています。日本人学生も同じ思いの学生が多いですから、当然といえば当然ですが。

しかし、実際には就職先は、大企業ばかりではありません。外国人留学生にも、就職事情を伝え、就職活動の重要なステップである「自己分析」と「職業理解」に取り組んでもらうために、就職ガイダンスが開催されました。

外国人留学生の場合、日本人学生よりも厳しい点があります。それは、大学院での専攻と就職先の企業で与えられる業務が一致していなければ、入国管理局が在留資格の変更を認めないのです。同大学でも、かつて、通訳として就職が内定したものの就労が認められず帰国せざるを得なかったマテリアルサイエンス研究科(材料工学)の学生がいました。

また、外国人留学生の就職先の規模ですが、全国の2005年のデータを見ると、従業員50人未満がもっとも多く41%、次いで従業員50〜300人未満が24%です。つまり、「300人未満」という中小企業への就職が、65%なのです。従業員300人以上が「大企業」の一つの目安であるわけですが、確実に就職を望むならば、自分の専攻と企業の特徴を一致させて、規模に捉われない就職活動も必要だと言えます。そして、日本の企業の99%が中小企業だと言われている点も忘れるわけにはいきません。

外国人留学生だけでなく、日本人学生にも言えることですが、学生はどうしてもB to C(Business to Consumer)の企業に目を向け、B to B(Business to Business)の企業をあまり知らないという問題があります。前者のほうが日常、コマーシャルなどに触れる機会が多いからでしょうが、後者の企業にも少し視点を変えていただけたら、と感じます。「顔も知らない相手とは結婚できない」というのは、就職先企業についても言えるのです。

とは言え、B to Bで、素晴らしい技術力や社風を持つ企業がたくさんあることを、学生にも知って欲しいと、私は願っています。



紅葉が美しい北陸先端科学技術大学院大学  
2008年1月23日(水)
企業見学で情報システムの部署を訪ねました


ジョブカフェ石川では、年に10回ほど企業見学会を組み合わせたセミナーを行なっています。毎回若者に見せたい企業を選定して依頼を行ない、打合せや下見を含め、準備に数日を要します。見学者にも、見たいことや確かめたいことを事前セミナーで準備してもらうと共に、ビジネスマナーをきちんと発揮するための訓練を経て、当日を迎えます。

今回の見学は、北陸電話工事株式会社でした。石川県金沢市に本社がありますが、今回見学させていただいたのは白山市にある情報システム本部のオフィスビルです。そのビルの中で、さらに社内向けシステム・社外向けシステム・受託システム・独自システム開発などに分かれているようです(一部お客様との関係で見ることが出来ない部署もありました)。

応対してくださった総務経理課長の林様は、かつてはプロを目指して活動するストリートミュージシャンだったそうです。これまでに何度かお会いしたことがあるのですが、大きな可能性を秘めた人だという雰囲気を感じます。

同社の情報システム本部は4階建ての独立したビルですが、各階にリフレッシュコーナーが配置されています。利用できる時間が決められているのかと質問してみたところ、時間は決まっておらず各自が自分の判断で利用をするとのことです。オフィスワークは、生産性を高めるためにも集中と発散が必要ですが、その効果も表れているようです。テレビのデジタル化に伴うビジネスチャンスに恵まれている同社ですが、残業がほとんど無いそうです。

面白いのは、退社時刻になると、全員のパソコン画面に退社時刻だと知らせる表示が表れて点滅を始めるそうです。それは、目覚まし時計のように、消しても30秒後にまた始まるそうです。

このアイデアは若手社員による改善提案によって導入されたそうですが、こうして
改善提案・社内標語・QCサークル・資格取得などによって社員に与えられる「ポイント」が、昇格・昇進に結びつくそうです。

職場を一通り見学させていただいてから、別室に8名の社員が質疑応答に答えるために集まってくれました。一番感じたのは、部署や職種が異なっても、皆さんとても仲が良いということです。結婚して子供がいるという女性社員にも働きやすさを尋ねてみましたが、女性の働きやすさについて法令以上の制度を導入しているという同社は、やはり「働きやすい」という答えが返ってきました。

同社の名前である「電話工事」と、今回見学させていただいた情報システム本部の業務には開きがあります。就職に当たって志望先を選ぶ際には、
企業の中には様々な部署があるということや、名前を知らなくても良い会社はいくらでもあるので自分の目で見てみることも大事だと、求職者には伝えたいと思います。


北陸電話工事株式会社情報システム本部

2008年6月6日(金)
若手社員研修を行ないました〜企業の規模ということを考える


鉄工関係の業界団体で、若手社員対象のビジネスマナー研修を行ないました。

ありがたいことに、この手の研修は各地でさせていただいております。「ビジネスマナー」というとサービス業系の講師が多い中、メーカー企業であるコマニー株式会社にかつて身を置いた私には、「製造業の職場でのビジネスマナー」が期待されているようです。

今回は能登から加賀まで、12社から24名の若手社員が参加してくれました。朝から夕方まで、私が準備したテキストとワークシートに沿って、演習やグループワークに取り組んでいただきました。

各社とも「会社の名前で外に出しても恥ずかしくない社員」を出してきたからなのか、入社の選考を勝ち抜いて選ばれた社員たちだからなのか、逸材が揃っているように感じました。なかでも、
中国人の社員が1人いたのですが、積極的にグループワークでムードメーカーを務めてくれ、また、さり気ないリーダーシップでグループをまとめてくれて、とても助かりました。

今回参加してくれた企業は、いずれも中小企業です。
残念に思うのは、就職活動中の若者もその親も、そうした企業についてあまり知識が無いことです。石川県内には、特定の製品の市場占有率が第1位という企業が、50社ほどありますが、多くは中小企業と呼ばれる企業です。それらの企業では、1人の社員は何十何百分の1の役割を担い、守備範囲も広いのです。逆に、大手の企業では何千何万分の1の役割を担うことになるわけです。

例えば、石川県で盛んな産業の1つにTT産業があります。ナナオやアイ・オー・データやPFUの名前を聞いたことがある方も多いと思います。中央の大手TT企業と比べると、地元TT企業のSEは守備範囲が広く、SEの資格の1つオラクルマスターで最高のプラチナ資格の保持者は多いのです。

大手企業と中小企業。どちらが良い悪いではなく、文化が違います。もし仮に、大手にいた人が中小に転職すると、業務内容の幅広さに驚くかも知れません。逆に中小にいた人が大手に転職すると、業務内容の狭さにやる気を失うかも知れません。

ちなみに私は、かつて所属したコマニー株式会社が、約1000人の規模の上場企業でした。ちょうど、大手と中小の良さがミックスされていたように思います。社内改革のスピードは速く、どんどん新しいことを取り入れながら、各事業部の独立採算制を取っていました。反面、1人2役をうたい、業務はもちろん様々なプロジェクトや社内委員会を兼務することは珍しくありませんでした。私も長らく社内報の編集委員を務めて、社内の様々な人に取材で会えたことが良い思い出です。


研修に参加してくれた株式会社北菱の工場内の風景

2008年6月28日(土)
職業訓練でコミュニケーション研修を行ないました


職業訓練には、雇用・能力開発機構が自前で技能系の訓練を行なうもの以外に、主にパソコンの資格取得を目的とする訓練を民間のビジネススクールに委託して実施されるものがあります。

ところが、技能系の職業訓練とは異なり、パソコン系の職業訓練は就職に有利かと言えば、残念ながら必ずしもそうは言い切れない現実があります。なぜなら、パソコンの資格と言っても、JavaやC++というプログラム言語ではなく、その多くがWordやExcelの資格の取得を目的としているからです。ご存知のように、今の企業では「パソコンが使えます」というのは「電話のかけ方を知っています」ということと同じような意味です。つまり、パソコンは仕事を進める道具として使えて当たり前で、企業で肝心なのはパソコンを使ってどんな仕事ができるのか、ということです。

というわけで、パソコン系の職業訓練を受ける人は、パソコンの資格だけでなく同時に、コミュニケーションスキル・ビジネスマナーはもちろん、他に経理や貿易業務の知識や設計など他のスキルが必要です。アプリケーションの3級や2級だけで就職ができるものではないのです。

そこで、今回は1日だけのセミナーということで、グループワークを職場のミーティングと見立てて、職場のコミュニケーションの取り方に関する演習をどんどん行ないました。職場では、会議や朝礼以外にも、様々なミーティングがしょっちゅう行なわれます。
そのようなミーティングで傍観者を決め込む態度を取ることは、長い目で見れば自分の立場が不利になりかねません。「問題意識が無い人」「自分の考えを持っていない人」「やる気が無い人」「肝心のミーティングで何も言わないくせに後になって何だかんだと言い出す人」などと誤解されかねず、会社からの期待も掛けられにくくなります。また、今日では、退職理由の第1位が「人間関係の問題」ですから、気持ちよく働き続けるには、コミュニケーション能力はとても重要なスキルだと言えます。

今回の皆さんはとても前向きに、こうしたミーティングの演習に取り組んでくれました。お疲れ様でした。

ところで、事務系の職種を希望している人と話をすると、時々気になることがあります。それは、「私は人と話をするのが苦手だから事務職に就きたいのです」と言う人が少なからずいることです。事務系の職種の8割はコミュニケーションに費やされているというデータもありますが、事務職は昔から「気働き」と言って、人に対する気配りとコミュニケーションが不可欠な職種です。また、事務職、と言っても、経理なのか人事なのか広報なのか、あるいは株式文書なのか購買なのか、販売促進なのか営業事務なのか何なのか、ということが不明確なこともあります。かと言って、中小企業のように事務のスペシャリストとしてどんな業務でもやれるほどの経験も無く、商業系やビジネス系の学校も出ていない、というとても心配になるケースが少なからず見受けられます。

長い目で会社が育ててくれたのは、終身雇用の時代のこと。残念ながら、終身雇用が崩れ非正社員が多くなった今日の企業では、「給料を与えながら、学校のように仕事を一から教える」ことはありません。正社員に求められるのは「戦力」、非正社員は「一時的な手足」、というのが、企業の厳しい現実なのです。
自分の仕事力は自分で身に付けるもの、と言えるかも知れませんね。その点では、いきなりの転職ではなく、職業訓練で自分を高めてから企業に応募しようという人たちは、やる気があるとも言えます。ぜひその点を自己PRしてくださいね。

厳しい時代ですが、働く側からすれば、やはり「自分を育ててくれる環境がある企業」が魅力的だと感じ、人気の的です。自分の成長は自分の責任、ということは前提でしょうが、
風通しが良くて、やる気のある人が育つ環境整備も企業には更に期待したいものです。


イメージ(写真はジョブカフェで行なったコミュニケーション研修の風景です)

2008年7月10日(木)
活動の幅を広げます


私はこれまで、キャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)として、ある会社の準社員契約を結び、社会保険を与えられながら仕事をしてきました。でも、先月一杯でその会社との契約を終了させ、その会社の業務として行なっていたジョブカフェのカウンセラー兼セミナー講師、及び北陸先端科学技術大学院大学カウンセラーの仕事も手放しました。

考えてみるとこの間、年間延べ1000人として、5年間で約5000人のキャリア・カウンセリングを実施し、就職や転職やキャリア形成の支援をさせていただきました。それぞれの人に思い入れがありましたが、中でも、とても厳しい条件にも関わらず本人の強いやる気の発揮でキャリアアップに成功したケースや、当初は転職を希望していたものの、それまでの経験を活かすには会社に留まるべきという結論に達して転職を思いとどまったケースなどは、より強く印象に残っています。

学生の場合、実業高校の生徒は概ね職業教育がなされているものの、普通科の高校や大学で職業教育をほとんど施されないままに社会に旅立とうとして課題を抱えている学生にたくさん出会いました。学力・学歴と、職業人・社会人としてのスキルとは全く別物なのですが、それに気づいていない学生・親・教師にたくさん出会いました。その壁を突破するために、時にはカウンセラーとして、時にはセミナー講師として、こうした人々に接してきた5年間でもありました。

企業との接点も多く持たせていただきました。シンポジウムにお招きした企業や、見学させていただいた企業は、いずれも数十社に及びます。中小企業でB to B(Business to Business)で、若者に感動を与えられる素晴らしい企業をたくさん開拓してきました。働く人々にやり甲斐のある職場を提供している数多くの企業・社長・採用担当者の皆さんと求職者とが交流する場を数多く提供できました。求職者が企業と深く交流することで職業理解を深めてくれたことが、毎回私の喜びでした。

そして今、まったくのフリーランスとして活動していくことを決めました。


確かに会社と契約して行政機関の仕事をしてゆくのは楽で安定しています。でも、私のキャリアアンカー(人生の重大な選択に影響を及ぼす価値観)は、それを求めてはいませんでした。それ以前に身に付けた、「1人2役」という働き方、常に自分の仕事を変革して改善してゆく働き方が、私にとってやる気が感じられる働き方なのです。お蔭様で、これまで副業的にさせていただいていたキャリアやコミュニケーションに関する様々な仕事も増えました。今後は、「キャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)」と同時に、かつての「コミュニケーション・デザイナー(ファシリテーター)」の仕事を全面的に復活させます。そして、いずれは国境を越えて人と人とが相互理解や認め合いのための深い交流をしてゆく、そんな場づくりを手掛けてゆきたいと思っています。

どうぞ、よろしくお願いいたします。



株式会社オノモリでの見学交流会

2008年7月29日(火)
私のしごと館へ行ってきました


児童養護施設(親がいないか親と一緒に暮らせない子供たちが生活する施設)の小学生から高校生までの子供たちを引率して、雇用・能力開発機構が設立した「私のしごと館」(京都府精華町)へ行ってきました。

同館へ足を運ぶのは、私にとって3回目です。児童養護施設の子供たちの引率で行くのは2回目です。石川県からは片道約4時間を要しますが、私は行く価値があると思います。金沢市内の中学校で修学旅行コースに組み入れている学校もあります。

実は、同館は、巨額の運営費が掛かることから廃止論議が起きています。でも、私は存続させて欲しいと考えています。

確かに第一印象で、建物の巨大さと豪華さに驚かされます。でも、館内を見学し、体験すれば納得できます。同館は、体験型の仕事ミュージアムなのです。数多くの企業の協力を得て設立され運営されている同館は、「機械工作」「介護」「印刷」など、様々な仕事を体験することができます。機械工作の体験には、企業から技術者が出向いて指導をしてくれます。人形作りや宇宙開発の体験をしたり、ゲーム仕立ての職業適性検査に取り組む子供たちは、とても生き生きして楽しそうです。体験できるメニューの多さは、他ではちょっと真似ができないくらいです。

あらためて、この施設はどんな役割を果たしているのか?と言えば、それは、子供たちに職業教育を施す教育施設なのです。教育や芸術の分野にはお金が掛かります。そうした分野は損益で考えるべきではないと私は思うのです。とりわけ、教育や職業教育に関する予算の支出は、わが国はGDPの割合から見れば少ないと言われていますから、私のしごと館のような貴重な施設の存続を、私は強く望みます。利用者である子供たちの視点に立った議論も必要ではないでしょうか。

ただ、同館の運営費用は、国庫からキャリア教育の予算として計上されるべきで、勤労者の雇用保険は当てにすべきではないと私は考えます。同館は失業者のための施設ではなく、子供たちのための施設としてすでに広く利用されているわけですから。


私のしごと館ホームページより

2008年8月20日(水)
キャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)の仕事の特徴と難しさ


私の職業名には「キャリア」という言葉がついています。これが困ったことに元々日本語ではないわけですから、放っておくと誤解されることがあります。そこで、今日は「キャリア」について考えてみたいと思います。

「キャリア」という言葉を辞書でみると、「経験、職業、成功、進行、進展」等の意味があることが分かります。また、「日本労働研究雑誌」では「職務、職種、職能での具体的な諸経験の客観的な連なりと、非連続的な節目での主観的な選択と意味付けが生み出していく回顧的展望と将来構想の意味づけのパターン」と定義づけられています。いかにも、研究者的な言葉の数々ですが、私どもキャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)がこれを読めば、「シャインのキャリア・アンカー」や「スーパーのライフキャリア・レインボー」「クランボルツの計画された偶然性」などの理論が色濃く表れていると気づかされます。

様々な学者が提唱した有名な理論の数々については、ここでは触れませんが、「キャリア」の様々な実践の現場を経験してきた私は、「キャリア」という言葉を次のように説明します。

キャリアとは、「その人らしい生き方を形成してきた数々の経験の積み重ね」、つまり「ライフスタイル」とほとんど同じ意味、だと。

かえって分かりにくいと言わないでくださいね。

生き方に正解はありません。もし仮に、人から「あなたはこんな職業に就き、こんな人と結婚するべきだ」と言われたとすると、参考にはできてもその通りの生き方はできませんよね?結局、どんな生き方をするかはその人次第なので、私どもキャリア・コンサルタント(キャリア・カウンセラー)は、相手の生き方に合わせた関わり方をしなければ相手からの納得は得られないのです。

もちろん、客観的なデータを相手に提示することもあります。でも、それを相手が受け入れる環境下で、もしくは受け入れない場合の対応も考えながら提示する必要があります。例えば、「30歳で30%」という数字があります。それは何かと言えば、
転職によって前より条件が良くなる人の割合が30歳で30%だということです。それより年齢が若ければ割合はもう少し大きいのですが、それより年齢が高くなるにつれて、転職によって条件が良くなる人は30%をどんどん割り込んでいるというデータです。でも、それを提示した相手が30%に属することになるか70%に属することになるかは、私が相手を採用する立場ではありませんから私には決め付けることはできません。

だから、相手が30%に属することを目指して転職活動をしたいのであれば、それが実現するように支援をします。また、転職を諦めるのであれば、現職を継続した先に得られるキャリアを一緒に考えるのが、
キャリア・カウンセリングです。あくまで相手が歩む人生ですから、相手が判断し納得するための関わり方なのです。人は、自分が納得して決めたことしか、本当のやる気は発揮できないものだと私は考えています。

これは、ロジャーズが唱えた「来談者中心療法」の考え方からきています。もちろん、カウンセリングでは、それだけではなく、「ブリーフセラピー」や「論理療法」などを相手に合わせてミックスして用いています(時折、カウンセリングという手段による問題解決が困難な人もおり、それを見極めるのもカウンセラーには必要です)。

ただ、「来談者中心療法」という考え方は、私の別の分野である
ファシリテーターコーチングにも共通している重要なスタンスなのです。


高校教師向けの面接指導セミナー

2008年9月30日(火)
行政職員のワークショップ研修を行ないました

今日まで3日間、滋賀県守山市を訪れていました。行政職員対象の研修を行なうためです。与えられた研修タイトルは、「『みんなで考える力』『物事をつくる力』スキルアップ研修」でした。

一言でいえば、職員対象の「ファシリテーター養成講座」です。私は、滋賀県内で、同様の研修を10年ほど前から度々させていただいています。滋賀県では、市民と行政のまちづくりにおける協働に、ワークショップが盛んに取り入れられています。守山市でも現在、市の総合計画を市民とのワークショップで進めているのですが、その中で見えてきた課題の整理や職員のファシリテーターとしてのスキルアップのために、私が呼ばれました。

今回、初日に見せていただいた市民とのワークショップで感じた課題を踏まえながら、残り2日間にわたる職員研修を行ないました。

私が準備した研修プログラムは、とても中身の濃いものでした。にも関わらず、参加してくださった職員の皆さんは、とてもスムーズにワークに取り組んでくださいました。スキルの高い人たちだと感心させられました。日頃から市民との協働の大切さを感じていたり、ワークショップに慣れていたりするからだと思うのですが、「スキルアップ研修」という名前のとおりの研修の着地ができました。

また、この研修の最大の特徴は、参加した職員は守山市だけではないということです。実は、近隣の草津市や栗東市と合同で行なわれた職員研修でした。3市あわせて30名ほどの職員が参加してくれました。このような
近隣3市合同の職員研修は初めてだということですが、5つに分かれたグループそれぞれで出会った職員どうし、今後もぜひ連絡を取り合っていただきたい、と感じました。私も引き続きまた、フォローアップで呼んでいただけるとのことで、ありがたい限りです。

今回、守山市人事課の坪内主幹には大変お世話になりました。彼とは10年以上前からの知り合いです。この度は奥様も含めて御夫婦にお世話になったのですが、初日に半日掛けて、守山市全体を車で案内してくださいました。旧中仙道の古い街並みも美しかったのですが、一番驚いたのは、守山市に佐川急便が運営しているとても巨大で立派な美術館があるということです。「佐川美術館」という名前ですが、その内部のかなりの部分が、
「平山郁夫館」となっていて、平山郁夫氏の大作が思う存分鑑賞できるのです。作品の数々は圧倒的な迫力で迫ってきて、作品の前に立つと、ビリビリと平山郁夫氏の「気」すら伝わってくる感じがしました。お蔭様で堪能しました。

3日間の最後に、名物ふなずしをパイにした
「ふなずしパイ」をいただいて帰ったのですが、深い旨味があって、癖になる味ですね。本当に、ありがとうございました。

お土産にいただいた「ふなずしパイ」

2008年10月21日(火)
コーチングのセミナーを行ないました


今日は、ある業界団体で、11社の管理職26名を対象に、終日コーチングのセミナーをさせていただきました。金沢市、白山市、能美市、小松市といっ加賀地方の企業の方たちでした。

コーチングは、部下のやる気を引き出し育成してゆくためのコミュニケーションのスキルなのですが、企業ではずいぶん浸透してきました。ただ、今回参加した企業で既にコーチングを取り入れている企業は1社のみで、他の10社はこれからという段階でした。

セミナーはまず、コーチングの前提となる考え方を確認し、前提となるスキルについて幾つかの演習を行ないました。意外にも、「部下に対して普段から一方的な態度で接してきたことに気づかされた」と頭を抱える管理職が多かったのが印象的でした。

例えば、コーチングでは、相手がはい・いいえで答える「閉ざされた質問」と、自由に考えながら答える「開かれた質問」とを使い分けるのですが、管理職の皆さんに日頃部下に投げかけている質問を書き出してもらったところ、「閉ざされた質問」が多く、「開かれた質問」が極端に少ないことに皆さん気がついたのです。

その後、5つに分類されるコーチングの種類それぞれについて、どんどん演習を行ないました。

面白かったのは、私が事前にイメージしていたセミナーの進行が、現場でどんどん変わっていったことです。もちろん毎回セミナーは多かれ少なかれ、進行の途中で急遽プログラムを変更することは普通なのですが、たいていは、講師である私の判断で変更を加えます。ところが今日は、参加者からの提案によって、2度のプログラム変更を行なったのです。提案は、研修成果を必ず持ち帰りたいという熱意の表れだと感じられました。変更したことによって、セミナーの最後には、「他社と大いに交流する」というもう1つの研修の成果も得られたようです。

参加者の皆さん、今日得た気づきをどうか忘れず、部下の育成に役立ててくださいね。どうか、良いコミュニケーションの関係を築き、働き甲斐のある職場をつくってください。お疲れ様でした。


加賀地方と言えば白山(私の家からもよく見えます)

2008年11月13日(木)
中小企業とモノづくり


日本の企業の99%は中小企業と言われており、私が住む石川県にも当然のことながら、たくさんの中小企業があります。

石川県は、九谷焼、輪島塗、金沢金箔、加賀友禅、和菓子などの伝統的なものの数々が、現代でも産業として続いています。石川県には、もともと、最高の物を作る、という伝統が、モノづくりに受け継がれている気がします。国内のシェア1位の製品を持つ企業が約50社あると言われています。

そうした伝統や技術もまた、そのほとんどが中小企業で受け継がれてきました。ただ残念ながら、そうした実態はあまり知られていません。

石川県は、建設機械や産業機械の世界的なメーカーである「コマツ」の創業の地であり、県内には3カ所の規模の大きな同社の工場があります。ところで、そうした世界トップレベルの製品がすべてコマツの工場で造られているのかと言えば、それは違います。コマツは、百社以上の企業から、部品やパーツの供給を受けて、完成品を組み立てて出荷しているのです。中にはOEMと言って、他社がコマツの名前で完成品まで造り提供しているものもあります。つまり、モノづくりは最終的な組立て・出荷メーカーだけでは成り立たず、精密で高品質な部品やパーツや、塗装や、そして配送や、部品の製造に使われる工作機械や検査治具なども含め、関わるすべての企業が質の高い仕事をしていなければ成り立たないのです。

例えば、レストランは食材を調理してお客様に提供しますが、味の決め手は味付けだけではありませんよね。レストランに供給される食材は、品質が良くて安心できるものでなければいけないわけです。レストランの料理や、完成した製品は、一般にイメージされやすいのですが、そこにいたるまでに関わる企業はどうしても見えにくいです。

そこで、今回は、私が見て素晴らしいと感じた企業、もっと広く皆さんに知って欲しいと感じた石川県内の中小企業を、3社紹介させていただきたいと思います(本当はもっともっとたくさんあるのですが、別の機会にします)。

【ライオンパワー株式会社】(小松市)
医療器、治療器、分析装置、ロボットシステムなどを手掛けているメーカー企業です。同社は、ノーベル賞を受賞した田中耕一氏が、島津製作所へ入社したばかりの頃に研修を受けるためにしばらく出向していた企業でもあります。製品は自社ブランドもありますが、多くは島津製作所などにOEM供給(相手先ブランド名供給)されています。自社と他社のブランドを合わせて、世界シェアの9割を持つ製品もあるそうです。基礎技術は、電気・物理・化学・機械・光学・電子など多岐にわたっています。同社には、社員一人ひとりに対する「教育マップ」というものがあります。それは、現在の部署と役割と、将来を考えて、本人が習得すべきスキルや資格が細かく明示されたもので、全員がそのマップを目標に自己の向上を図っています。当然、周りの先輩や同僚もその達成のためにお互いに協力するのですが、日々の業務の作業工程表の中で自然にそうした体制が取られています。
同社の社員の経歴は面白く、前職が会計事務所だった人が入社して開発の仕事に就いたり、携 帯電話の販売員だった人が入社して基盤の製造に就く際に、「プログラム言語ををマスターする ように」というマップを与えられたりするのです。複数分野の知識があるからこそ、世界で勝負で きる製品が生み出せるというのが同社の秘密です。同社では、「Excelが出来る」というのは、   Excelを使ってプログラミングが出来る、ということを意味しています。独特なノウハウによる採用と教育によって、同社では退職者が極めて少ないことも大きな特徴の1つです。ちなみに社長はかつてJリーグにいた人で、今でも地元社会人チームを率いているようですよ。

【株式会社明石合銅】(白山市)
現在よりも保守的だった時代に長らく、女性の社長が率いていたことがある同社もまた、とても魅力的です。同社は、鋼などに銅合金を溶着させた複合材料を作る技術を持っています。その技術は、世界では2社、国内では同社のみというものです。製品の輸出比率も20%ほどあります。同社のホームページを立ち上げると社歌を聞くことが出来るのですが、社長が思いを込めて作詞したそうです。「人も会社もおもしろくなきゃ」「かっこよくなきゃ」など、ノリの良い詩と曲です。小集団活動や、クラブ活動も盛んで、仲の良さを感じる企業です。
社員は挨拶がとてもしっかりと出来ています。同社の工場を訪れると、すれ違う社員がヘルメットや帽子を取って挨拶をしてくれます。また、専務と社員が肩を組んで歩きながら話をしている場面を目撃したこともあります。「工場をジャングルにしよう」という合言葉で、社員一人ひとりには、自分が世話をする観葉植物が決められているのもユニークです。玄関先に社員が世話をする鉢植え植物を置いている企業は他にもありますが、職場である工場を「ジャングルにしよう」というノリは他では見たことがありません。

【株式会社浅野太鼓楽器店】(白山市)
2009年に創業400年を迎える同社は、和太鼓を演奏する人たちにとって、全国的に有名なのは言うまでもなく、アメリカにも同社の太鼓を使用する和太鼓チームが数多く存在するそうです。同社の浅野専務は、「常に太鼓の世界の先頭を走りたい」「伝統は改革しないと伝統にならない」という思いを強く持った方で、工場の他に資料館、練習場も増設されました。また、同社が発行する太鼓の専門雑誌「たいころじい」は、とても読み応えのある立派な雑誌です。「炎太鼓」などの太鼓チームの支援にも力を入れる同社は、太鼓とそれを楽しむ文化の両方を生み出し続けているのです。また、グッドデザイン賞にも挑戦し、過去3度受賞しています。製品もそうですが、建物もホームページも、同社には深い美を感じます。
同社は、そうした和太鼓と日本文化に惚れこんだ人たちの集まりだと感じます。浅野専務は全国 の祭の太鼓の音が聞き分けられる耳の持ち主ですが、社員の皆さんが太鼓をつくり上げてゆく手さばきや身のこなしもまた、熟練した職人ならではの美しさがあります。和太鼓を造ることも演奏することも好きな同社の社員もまた、しっかりとした挨拶ができる人たちです。そして、専務の方針で社員の皆さんはそれぞれの地域の活動にも積極的に関わりつつ、始業時間の1時間前には全員出社しているというほど、仕事が好きな人たちです。美しい和太鼓が自分たちの手で仕上がってゆく仕事を楽しめているのでしょうね。ちなみに、ある社員に勤続何年になるのか尋ねたところ、「私は“まだ”10年です」という答えが返ってきたことは印象的でした。胴の切り出し、漆塗り、皮張り、皮に描く絵、錨打ち、バチの製作と、すべての作業において誇りを持って最高の働き方ができているのでしょうね。社員の皆さんの穏やかな表情がとても印象的な企業です。

リクナビや独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査では、
社員の平均年収は企業の規模と比例しており、大きい企業ほど収入が多くなることが分かっています。ところが、「仕事のやりがい」「仕事の自由裁量度」「社内の人間関係」などは、会社の規模と反比例し、規模が小さい企業ほど社員が感じる仕事の満足度が高まるという結果になっています。心の問題を抱える社員も、企業の規模が大きくなるほど発生する割合が大きくなるというデータもあります。中小企業には大企業にはない風土の良さがあるようですね。規模が小さい企業の方が頑張りが経営者に伝わりやすいため、人によっては大企業に勤める人よりもはるかに多い収入を得ている場合もあるようですよ。皆さんも中小企業を見直してみませんか?


見学者に工場の説明をする株式会社浅野楽器店の浅野専務

2008年12月31日(水)
真面目が一番!


今月中旬、ある市の人事課の職員と話していた時のことです。先日、今年春の新採職員と面談をした折、人事課の人が、「採用面接の志望動機で、地域住民に奉仕したいと言ってたよね?」と問いかけると、「そりゃ、採用試験ではそう言いますよ」と開き直りとも取れる返事が返ってきたそうです。人事課の職員は、「今年の新採ですよ!」と、ショックを受けていました。

その人事課の職員は、休日にも進んで地域の活動に取組んでいる人で、街を歩くと、住民から声を掛けられるような人ですから、なおさらショックだったのでしょう。

公務員志望の人に対する就職支援をしていると、確かに、公務員を志望する理由として、「安定しているから」「競争にさらされないから」「親が望むから」など、溜め息をつきたくなるような“本音の理由”を挙げる人が多いのが事実です(全員とは言いません。念のため)。でも、採用時はどうあれ、公務員になった以上は、市民に対して、その職務に責任があるはずです。人事課は、すべての職員が責任を果たす人材に成長するよう教育を施すわけですが、「そりゃ、採用試験ではそう言いますよ!」と言うのは、成長することを拒否して開き直る態度ではないでしょうか。


働く目的は人それぞれですが、よく言われる目的としては、「生活のためにお金を稼ぐこと」「社会・人とつながること」「自分の成長のため」という3つがあります。人間は社会的な存在であるからこそ、仕事を通して、お金や人とのつながりと同時に、責任をもって仕事に取組むことによって社会的な自分の成長がもたらされるのです。“真面目に”“謙虚に”働いてみましょう。

他方、今日の世界的な景気後退に対して、日本の景気も急速に悪化しています。日本の強みであった筈の製造業も苦戦を強いられています。そして、雇用情勢が悪化し、学生の内定取り消しや、派遣社員の契約打ち切りの記事を新聞で読まない日が無い状況です。この事態に対して様々な議論がありますが、確かな事実があります。それは、今日の企業の対応が一つの社会問題を招いてしまっているということです。


日本の近代のビジネスの原点は、“利他の心”にあったと思います。「売り手良し・買い手良し・世間良し」という近江商人の“三方良し”の精神は、有名です。日本のビジネスは「お金を稼ぐ」だけでなく、「社会に貢献する」・「企業の品格を成長させる」ものだったはずです。

そうした企業のあり方が、長らく日本のビジネスと社会の強みだったはずです。百年続く企業は世界的に見れば非常に珍しい中で、日本だけが他国に類を見ない多くの長寿企業を突出して生み出してきたのも、そうした強みがあったからではありませんか?ちなみに、長寿企業に共通しているのは、「利他の心」のほか、状況が厳しい時には「原点に立ち返る(経営理念に照らして判断する)」ということです。

私は、企業にも、日本の将来のために、“真面目に”“謙虚に”今日の情勢に対応してくれることを望みます。

  


私の地方の鏡餅は白い色の2段重ねです。
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         毎田雄一

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